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FLAG予備知識集 / 桝谷直俊
■「戦場ジャーナリストの生と死」

皆さん、こんにちは。ただいま私は、本日8月19日と20日に開催されるキャラホビ2006取材の準備中です。こちらの会場のアニプレックスブースでは、『FLAG』DVDをご予約いただいた方先着30名に、高橋良輔監督のサイン入りポスターをプレゼントするということですので、会場にいらした方はぜひお立ち寄り下さい。
さて今回は、戦場ジャーナリストについての話の最終回です。

言うまでもなく、従軍記者や戦場カメラマンというものは、戦場に入っていかないとならないのですから極めて危険な職業です。世界でもっとも有名な戦場カメラマンであるロバート・キャパは、スペイン内戦(1936〜39)、第2次世界大戦(1939〜45)、第1次インドシナ戦争(1946〜54)を撮影してきましたが、地雷によって1954年に死亡しました。日本人の戦場カメラマン沢田教一は、母子が川を泳いで逃げている「安全への逃避」という写真でピューリッツァ賞を受賞して世界的に有名になりました。ですが1970年に銃弾で命を落としています。パイロットやパラシュート降下の経験もあり、第2次世界大戦の硫黄島や沖縄の戦闘を撮影した女性カメラマンのディッキー・シャペルも、ヴェトナム戦争撮影中の1965年に地雷によって「女性初の戦死したジャーナリスト」になりました。 彼ら戦場カメラマンは戦闘の中に飛び込み、勇敢に、時には無謀とも言える状況の中で撮影を行ってきました。あるカメラマンは「カメラを通してものを見ると、目の前の出来事にフィルターがかかったようになり、恐怖心を感じなくなる。そのため愚かにも危険の中に自ら突っこんでしまう」と語っています。この「カメラを通してものを見ると、恐怖を感じなくなる」というのは、多くのカメラマンに共通する心理現象のようです。

ですがそれだけではなく、今日戦争によるジャーナリストの死者は増大傾向にあります。1954〜75年のヴェトナムでの死者は63人(*1)にも上りました。さらに2003年に始まったイラク戦争では、2006年3月の段階(つまり戦闘開始から3年間)で、すでにこのヴェトナム戦争の犠牲者数を超えているそうです(*2)。
では、どうしてこれほど犠牲者が増えているのでしょう?
大きな理由に、第2次大戦後の各地の紛争が、正規軍(*3)と正規軍の戦闘ではなく、不正規軍(*4)が戦闘に参加していることがあると言えるでしょう。不正規軍は攻撃手段としてテロ攻撃をよく使用します。さらに、道を歩いている、民間人としか思えない人間が突然武器を持って襲いかかってくるため、戦線(最前線)がはっきりしません。そのため安全地帯と呼べる場所が極めて少なく、安全と危険の尺度を測るのが困難になります。
また、例えば現在のイラク情勢で言いますと、英米軍や新イラク政府軍と対立している武装勢力は、統一したひとつの指揮の下に行動しているわけではなく、武器を持っている者が思い思いに戦闘行動や誘拐行為を行っているのに近い状態にあります。そしてその中には、外国人と見たら片っ端から攻撃しようとしている者、ジャーナリストをすべて敵視しているような者もいるのです。イラクに限らず、世界の数多くの紛争地域が、程度の差こそあれ似たような状況に置かれています。
それでも世界の各地の戦場で、今もジャーナリストが活動しています。そしてその多くはエンベッド取材ではないフリー取材のジャーナリストです。彼らは、ひとつの国の軍隊に張り付いていてはわからないことを取材するためにフリーでいますが、彼らがいきなり襲われたとしても守ってくれる人間はいません(*5)。どうして彼らがそこまで危険を冒して戦場に身を置くのか、その理由は人それぞれでしょう。ですがそういった人たちの努力によって、我々は今世界で何が起こっているかを知ることができるのです。

(*1) ヴェトナムとカンボジアがフランスからの独立を目指して発生した第1次インドナ戦争(1946〜54)、ヴェトナム(第2次インドシナ)戦争、中華人民共和国がヴェトナムに侵攻した中越戦争(1979)を合計すると172名に上る。
(*2)誘拐されて行方不明になっている人もおり、具体的な犠牲者数は集計者によって異なっている。
(*3)軍服を着た軍人によって構成される、国家のもとに指揮されている軍隊。
(*4)ゲリラや民兵、レジスタンス、パルチザンなどの、軍服を着ておらず、国家によって指揮されていない武装組織。ヴェトコンや、現在のイラクにおける武装組織もこれにあたる。
(*5)独自に、民間のボディガードを雇っているジャーナリストもいるが、当然正規の軍人の力とは比較できない。


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