トップページ ニュース FLAGとは? 配信情報 スペシャル メールマガジン PLAYLOG BD&DVD&CD

SPECIAL

寺田監督インタビュー

Qこの『FLAG』という企画を最初に聞いたときの印象は、いかがですか?
寺田う〜ん、ちょっと難しいんですけど、これは一番最初の時は、まだ『FLAG』には、なっていなかったんですよね。最初は『旗取り合戦』っていう話だった。実際問題として、今、アニメーションを制作する際に使用できる動画の枚数が限られている中で、こういう作品をやるというのは、すごく難しい、という風に最初は思いました。そこから変わってくるわけですが。

Q『FLAG』という作品は、他作品とはどこが違って、どこが新しいのでしょうか?
寺田結局ね、すごく色んなことがたくさんあるんですけども、つまり「主人公が一番映像の中に出てこない」ということですよね。それで主人公の目を通して、主人公が何を考えていて、どういう風に魅力的か、というのを視聴者に感じさせていかなくてはならないので、すごく難しいことだと思いますね。それは面白いことだと思うんですけど。

Qドキュメンタリーテイストということに対して、お伺いさせてください。
寺田単にドキュメンタリーテイストと言うと、例えばニュース映像のように映像がだらだらと流れているだとか、単に画面が(手振れで)動いているとかを言われるんですけど、基本的には違うんですね。そういうことは表側のことで。実はカメラで撮影している人間のほうを描かなければならない。今回はそれがテーマなんですよね。ですから映像表現とかは二番目のことで、実は一番大事なのはカメラを今、映しているという人間の想いとか吐息が伝わってこなければならないので、それが全部ですよね。

Q今回の作品で演出上で意識していること、気をつけていることは?
寺田皆さんも写真を見るときに、その写真に写っているものを見るわけですよね。“花”とか“誰か”だとか映っているモノ。ところが“花”を見せたいわけじゃない、写真に写っているものを見せたいわけじゃなくて、「実は写真を撮った人がいる」ということを意識させなきゃならないわけですよね。だから皆さんが持っている写真を見るときに、もう一回、ちょっと見つめ直してもらいたいんですが、この写真の向こう側に「カメラを構えている誰か」がいるわけですよね、必ず。それが一つの空間になりますから、その写真を見せるのではなくて、その写真を今、撮っている人がいる。ボクの映像を撮っている人がいることを伝える、分かってもらう。それが面白い。

Q劇中、カメラ視点ということを再現するために、かなり努力されていると思うんですが?
寺田それはね、ルールとして良輔さんが決めちゃったんですよ。普通のドラマは第三者カメラがあって話を進めていきますよね。それを「第三者カメラを一切使わないんだ」というルールを決めたので、それに対しては徹底的に第三者カメラを入れない。それで、どうやって伝えるか、ということですよね。だからドキュメンタリーカメラの画質がどうのこうのということじゃなくて、第三者カメラが一切ないんです。それで白州をどうやって見せていくかということですね。それが一番、演出的には大変なことじゃないですかね。

Q例えばHAVICの戦闘シーンも、上空のヘリからの映像だったり、HAVICの内蔵カメラだったりと視点がかなり限られてしまいますよね。
寺田そうです。客観的なカットはないんです。

Qそのせいで、「このシーンでこうしたカットを使いたいのに使えない」ということがあるんじゃないですか?
寺田いっぱいありますね。非常に重要なことなんだけど、これだけはちゃんと伝えておきたいんですけど、今回の作品は“遠距離恋愛”みたいなものなんですよ。つまり会えないんですよ、しょっちゅう。見れないんです、会いたい人に。だけど、そうすればそうするほど想いが募る。だから、見せたいものがはっきり見えるよりも、かすかに見えていたほうが気持ちが募る。だからHAVICに関してもそうだけど、白州にしてもそうだけども、見せたいものを全部見せるじゃないんですよね。なかなか見られないという(笑)。だから皆に想像してもらうというか、想いを募らせてもらうということが、誘導できれば充分面白いと思いますけどね。

Q過去に関わった作品と比較して、この作品の自身の中での位置づけはどういったところにありますか?
寺田毎回なんですけど、毎回やる作品は一番なんですよ、本当にね……。ただ、この作品はすごく特殊だと思うんです。大冒険だと思うんだけど。自分、30年以上やっていますけど、少なくとも自分の中では、今一番ですね。すごく面白いですね。……何と言うかな。それよりもハードルがすごく高い。それはね、良輔さんが悪いんだけど(笑)。

Q最初に高橋監督と出会ったときの印象は?
寺田ものすごく昔の話なんですよ。30何年も前の話で、『ゼロテスター』の頃なんですけども。自分が撮影の仕事をやってまして、その時に編集の仕事をやりたくてお会いしたのが高橋良助さん。それで良輔さんは、良い意味で“すごくいいかげんな人”なものですから、それで僕が絵コンテを描かしてもらったんです。だけど絵コンテを描かしてもらうときには、シナリオがなかったんですよ。それで最初の絵コンテは、僕がシナリオを書いたんです。それを許してくれた人なんですね(笑)。この作品は、そのお付き合いの中で出てきたものです。

Qそれで、この作品でも高橋監督とやることになって、どうでしたか?
寺田その『ゼロテスター』以後も何回か、つながって仕事はやっていたんですけど……。自分は外国作品をやっていたものですから、制作枚数にかなり余裕のある作品をやっていたんですね。それが今回は国内の作品と言うことで、そうすると枚数制限がかなり厳しく設定されているじゃないですか。それで、それは自分は出来ないと思った。それと『FLAG』は最初、「旗取り合戦」ということがスタートだったんですが……私は政治劇と言うのは一切興味がないんです。自分が興味があるのは人間だけなものですから、人間を描きたいんですよね。ですから最初はお断りしようと思っっていたんです。それが“カメラマン”という発想がお互いの中にあったものですから、「カメラマンものをやりましょう」となったときに、「じゃあ、やりましょう」ということになったんですね。

Q高橋監督と寺田監督の役割と言うのは?
寺田良輔さんは「旗をかかげたい人」なんですよ。それもね、でかくて重くてね、ものすごく高いところに掲げたんですよ。これから「お祭りを始めるぞ」って掛け声をかけた人で、「その旗を背負って突撃している」のが俺なんだね(笑)。今、このスタジオにいるみんなもそうなんだけど。でね、突撃するときは色んな良い事言うんだ。迫撃砲は幾つある、戦車は幾つある、部隊はどのくらいいるって。走るに従って、何か違うぞみたいな。何か二〜三人の新兵がトロトロとついていて、突撃するわけです、その旗を持って。まあ、そんなもんですね。

Q今回の『FLAG』という作品で、高橋監督との作業、仕事に関して、どんな印象を持っていますか?
寺田いつもとたいして変わらないですけど(笑)。ただ今回は自分が監督と言われて、おだてられて走っているけど、すごく大変ですね。……あのね、イメージを作って、イメージだけの話し合いをしているときは、それぞれの人たちの相違があんまり分からないんですよ。「そうだね」とか言っているけど、本当は違ったりするんですね。ところが実際に走っている現場になると、その違いがすっかり分かるんですよ。それをどうするかというのが俺の仕事になってくるわけで。良輔さんは、その現場にはいないから、すごく楽しいところにいられて(笑)。それをどうやって調整していくか、どうやって具体的に伝えていくのが、実際大変なんですけどね。だけど、そういうのも含めてね、「生きているから面白い」ので。それは一緒に楽しまないと。ただただ大変なことばかりになってしまうんで。これは隠れたテーマですから、たぶん後でみんなにも分かりますよ、その意味が。

Q視聴者さんに向けて、どういったところを観てもらいたいですか?
寺田白州が、たまたまカメラが好きな女の子が、たまたまそういう場所に行ってしまった。そこで、どう頑張れるんだろうというのが、可愛いな、いいなというのがみんなに伝わっていけば、それで自分はいいと思いますけどね。一応、僕が白州担当で、良輔さんが赤城担当になりますから(笑)。

BACK


©TEAM FLAG/Aniplex・The Answerstudio