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FLAG予備知識集 / 桝谷直俊
■「第二次世界大戦までの戦場カメラマン」

皆さん、こんにちは。今後はこのように、ほぼ週に1回のペースで掲載していきたいと思いますのでお付き合い下さい。

私はプロフィールの通り、萌え系のアニメ雑誌などでも書く一方、この『FLAG』や、別のかなり硬派なアニメでミリタリー方面の記事を担当しています。それで、例えば萌えアニメの方面でいっしょに仕事をしている人にミリタリー系の仕事の話をすると「そんな仕事もしているんですか?」と言われます。逆も同じです。
一見これは両極端のように思えますけど、「要するにこれって、『メカと美少女』という昔からの日本アニメの原則をやっているだけじゃん!」ということなのでした。私の軍事に対する興味は、メカとは別のところにあるんですけど、その話はまたいずれ。

閑話休題。
さて今回は、前回の話の続き、戦場カメラマンについてです。


フランスのリュミエール兄弟がシネマトグラフ、つまりスクリーン式の映写機を発明したのが1895年ですが、初めて戦争が動画として撮影されたのは、1899〜1902年のボーア戦争(南ア戦争)になります。その後、1914〜18年の第一次世界大戦では、動画・静止画ともに大量の映像が撮影されました。
特に写真は、第一次大戦以降は大きな意味を持つようになりました。なぜなら航空機が戦争に使われるようになり、航空偵察が可能になったからです。飛行機で敵地上空を飛行して写真を撮ることにより、敵の配置や行動などがわかります。1918年、ドイツ軍は連合軍に対して大攻勢に出ましたが、攻撃は頓挫しました。その理由は、航空偵察によってドイツ軍の攻撃が事前に連合軍に察知されていたのが一因とされています。
動画での戦場の撮影も行われましたが、これはあくまで軍・政府の記録用・資料用として撮影されたものでした。撮影された戦場の動画映像が映画館などで上映されることはありましたが、厳しい検閲を通ったもののみでした。つまり、上映はあくまで国民の戦意高揚を目的としたもので、戦争の悲惨な状況を撮影したフィルムは倉庫に保存され、戦後になるまで一般市民の目に触れることはなかったのです。

第二次大戦の状況も似たようなものでしたが、この頃になると「宣伝」という言葉の意味が更に大きくなっていました。例えばドイツはPK(宣伝中隊)という専門の部隊を組織していましたし、アメリカではハリウッドを使って宣伝映画を制作しています。
ドイツ軍の宣伝中隊は正規な軍人として、戦闘訓練を受け武器を与えられ、状況によっては戦闘することを求められました。またアメリカ軍の従軍カメラマンも軍部隊への所属を命じられ、戦闘服を着せられて、軍の規則に従うことが要求されました。そのため、今日我々が知る「従軍カメラマン」とは少々異なっています。
そして記事には当然検閲がありました。検閲というとどうしても悪い印象を受けますが、自国の軍の行動を、敵国のスパイが新聞を読んだだけでわかるようでは困ります。単に「政府にとって都合の悪い映像を自国民に見せない」というだけではないのです。当時の従軍記者もこのことを理解していたので、軍には協力的でした(*1)。

というわけで当時の戦場カメラマンには色々と制約がありましたが、そんな中でも多数の有名な写真や映像が第二次世界大戦中に撮影されています。例えば、アメリカ兵が硫黄島に星条旗を掲げた写真(*2)は、アメリカ本国に伝わるや大反響を呼びました。アメリカ国民はこの旗の写真を見て感動し、戦場で戦っている兵士たちのことを思い、戦争に勝利することを誓ったということです。AP通信の記者ジョー・ローゼンタールは、この写真でピューリッツァ賞を獲得しました。

以上のように、第二次世界大戦や朝鮮戦争の頃までは、軍・政府と従軍カメラマンはほぼ一体の存在でした。これが大きく変わるのは、ヴェトナム戦争になってからです。この話は次回。

(*1)もちろん「逆らったら逮捕されるから」というのもありますが。
(*2)この写真は、硫黄島で最も高い山である擂鉢山に星条旗が立つ瞬間を撮影した写真だが、実は占領直後の写真ではなく、見栄えの良い大きな旗を、後になって立て直したときの写真。また、この星条旗を立てた6人の兵士の話を描いた映画『父親たちの星条旗(FLAGS OF OUR FATHERS)』が、クリント・イーストウッド監督作品として2006年10月に公開予定。更にこの映画の続編として、硫黄島の戦いを日本軍の視点から描いた『硫黄島からの手紙(RED SUN, BLACK SAND)』が2006年12月に公開予定。


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